日興アセットマネジメントから、2023年4月26日よりネット販売専用の投資信託「Tracers MSCI オール・カントリー・インデックス（全世界株式）」を開始することが発表しました。
この投資信託の信託報酬は驚異の0.05775%ということで、このニュースを聞いて投資界隈では、「eMAXIS Slim 全世界株式（オール・カントリー）」がオワコンになるのではないかという憶測が飛び交っています。
そこで今回は、この「Tracers MSCI オール・カントリー・インデックス（全世界株式）」の信託報酬の安さの秘密に迫ります。
Tracers MSCI オール・カントリー・インデックス（全世界株式）とは
2023年4月10日に日興アセットマネジメントから発表された有価証券届出書の内容から、「eMAXIS Slim 全世界株式（オール・カントリー）」と比較しつつ内容を紐解いていきます。
ファンドの特徴
指標となるインデックス指数は、「MSCIオールカントリー・ワールド・インデックス（ACWI）」となり、こちらの指数に連動した投資成果を目指します。
これは、eMAXIS Slim 全世界株式（オール・カントリー）と同様の内容になります。つまり、運用される国や地域の構成比率は基本的に同じということになります。指数自体は世界に分散された指数のため比、較的リスクも少なく安心して投資ができる指数ではあります。
また、基本的には同じ指数に連動している限り、コストが安い方が優秀なファンドということになりますので、今後のコスト比較が差を分ける鍵となってきそうです。
コストはどうなっている？とeMAXIS Slim 全世界株式（オール・カントリー）と比較
購入時手数料
購入時手数料（申込手数料）はありません。
これは、eMAXIS Slim 全世界株式（オール・カントリー）と同様の内容になります。
信託財産留保額
信託財産留保額もありません。
これも、eMAXIS Slim 全世界株式（オール・カントリー）と同様の内容になります。
信託報酬
信託報酬には大きな差がついています。
簡単にeMAXIS Slim 全世界株式（オール・カントリー）の目論見書と比較しても、Tracers MSCI オール・カントリー・インデックス（全世界株式）は半分程度の信託報酬コストであることが分かります。
| 支払先/配分（税抜） | eMAXIS Slim 全世界株式 | Tracers MSCI オール・カントリー・インデックス |
|---|---|---|
| 委託会社（運用会社） | 年0.041% （1,000億円以上） | 年0.0175% |
| 販売会社（SBI証券など） | 年0.042% （1,000億円以上） | 年0.0175% |
| 受託会社（信託銀行） | 年0.020% （1,000億円以上） | 年0.0175% |
| 合計 | 年0.103% | 年0.0525% |
投資するうえでの懸念点
ここまで比較してみると、「Tracers MSCI オール・カントリー・インデックス（全世界株式）」が圧勝しており、業界最安値の信託報酬となるのが分かります。
しかし、本当にこのようなことが可能なのでしょうか。有名な米国ETFである「バンガード トータル ワールド ストックETF(VT)」でさえ、経費率は0.07%です。そのため実際にはいくつもの懸念点があると思われます。
ファンドの資産総額が低い
まずは、これから誕生する投資信託であるということから、ファンドの純資産総額は低く、これからの成長に期待となります。ファンドの純資産総額が低い場合、運用が続けられず強制償還のリスクもあるため、誕生したばかりの投資信託に投資をする場合は注意が必要です。
隠れコストが不明
Tracers MSCI オール・カントリー・インデックス（全世界株式）の信託報酬が最安値なのは事実としてありますがまだ運用が開始されていません。そのため運用をした結果、隠れコストが大きくなってしまった場合、eMAXIS Slim 全世界株式（オール・カントリー）と実質コストが逆転してしまう可能性もあります。
実際、指数の商標利用料が含まれていなかったり、有価証券届出書の記載を確認する限り委託会社の業務がeMAXIS Slim 全世界株式（オール・カントリー）より少ないように見える箇所もあるため、実質コストに関してはまだ安心できません。
隠れコストの詳しい説明は、以前の記事でも詳しく解説していますので、是非確認してみてください。
他が追随する可能性
現状、eMAXIS Slim 全世界株式（オール・カントリー）を運用する三菱UFJ国際投信は、Tracers MSCI オール・カントリー・インデックス（全世界株式）の信託報酬に追随しないとしていますが、本当に実質コストが一番安いということになれば、他の投資信託が追随してくる可能性もあります。
実際に、現在のeMAXIS Slim 全世界株式（オール・カントリー）のコストは、先日の「たわらノーロード 全世界株式」の信託報酬が値下げで年0.1133%（税込）になったのに対抗して、信託報酬を0.11325%（税込）に引き下げている実績もあるため要注目です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は「Tracers MSCI オール・カントリー・インデックス（全世界株式）」の信託報酬が0.05775%という驚きのニュースから、信託報酬の安さの秘密に迫りました。
まだ不明確な要素がいくつもあるため、現在eMAXIS Slim 全世界株式（オール・カントリー）を購入している方はそのまま継続で全く問題ないと思います。
Tracers MSCI オール・カントリー・インデックス（全世界株式）については、一旦様子見で問題ないと思いますが、もし実質コストが安いということになれば、投資家としては大歓迎ですので、今後の動きに注目していきましょう。
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